スタジオ・キャットキック

広告・販促の企画・コピーライティングを手掛ける五十畑裕詞と、猫作家・イラストレーターの梶原美穂が所属する会社です。http://www.catkick.com/

「若者のもの離れ」対策異業種会議(宣伝会議2014年12月号) by五十畑

 若年層を対象にした商品のプロモーションを企画したり制作物を手がけたりする機会は決して少なくないのだが、必ず迷うのがメディアプランニング。オンライン中心の構成を考えてみても、どこかスッキリしないことになる。だが、今回の記事を読んでかなり納得できた。おそらくスッキリしない理由は、媒体選びに気を使っていたから。そうではなく、彼らの価値観や消費の動機をもっとしっかり把握し、そこを出発点に施策を考えるべきだったから。若者だからこの媒体、この媒体だからこのツールとこの表現、というロジックは、通用しないのだと思う。

 以下、記事の概要と、ぼくが個人的に思ったことをざっくりと紹介する。

 

 

消費をしない!?若者を分析する

 キリン食生活文化研究所によるレポートを紹介する記事。一人で行動したいという衝動の背後にも、「友人への気遣い」という動機が見え隠れする。ネットではつながりたい、大きなイベントなどは一緒に盛り上がりたいと考えているのに、一方で、自分一人で誰からも干渉されることなく楽しむことを大切にする。このレポートを読んで真っ先に思い浮かんだのが、小説家・平野啓一郎が主張している「分人」という考え方。人は、接する相手によって自分を変えていく。その「変わる自分」の集合体こそが自分の本当の姿である、という考え方。これが理解できないとアイデンティティに悩むことになる。若者の「つながりたいけど一人でいたい」という傾向は、まさにこの「分人」のバランスをうまく取るための最善の方法、と受け取れなくもない。

 

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

 
「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義

「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義

 
空白を満たしなさい

空白を満たしなさい

 

 

「若者のもの離れ」対策異業種会議 Part 1 |ビール業界(キリンビール)×TV業界(TBSテレビ)×若者研究所・原田曜平氏の三者による鼎談

 ビールとテレビは、確かに若者離れに悩む業界の代表格。

例えばビール離れなど「○○離れ」が起きているのは事実だが、その原因は、

①社会的な消費の強制がなくなったこと(「まあ飲め」「タバコで一服しながらコミュニケーション)」

②消費の動機が個人的価値からSNS的価値に移行したこと

③納得(自分の価値観などに合致)しなければ消費しないこと

 の3つに集約されそう。以下、鼎談の中で重要と思われたことを箇条書きしてみた。各業界代表者が具体的にどんなアプローチをしているかを説明しているなど、非常に興味深い記事になっているので、ぜひお読みいただきたい。

●社会的に強制されることがなくなったため、「ビール離れ」「タバコ離れ」などが生じた

●ある消費者が20代で選択したブランドは、30代以降の消費にも影響を与えつづける可能性が高い
●若者の消費対象から外れている商品でも、イベント化されれば「参加」という形で消費してもらえる可能性が高くなる。その好例が、ビール離れの若者がなぜか多く参加し盛況の「オクトーバーフェスト」。盛況の理由は、おそらく「SNSのネタになるから」「みんなで盛り上がれるから」
●今の若者の消費傾向は「お金持ちの2代目」。生まれてからずっとある程度満たされていて、物欲が低い
●若者は、自分一人が満たされることより、友だち全体が盛り上がることのために消費する傾向がある
●若者は、納得してからでないとモノを購入しない傾向がある

 

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)

 
近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)

 

 

 

情報病――なぜ若者は欲望を喪失したのか? (角川oneテーマ21)
 

 

僕たちの趣味、メディア、遊び —若者研 学生プレゼンテーションから—

 博報堂Consulactionセミナーで行われた、博報堂ブランドデザイン若者研究所の現役学生研究員によるプレゼンテーションを紹介している。おもしろい内容なので、ぜひご一読を。

①「なぜ若者が遊びに〈一体感〉を求めるのか」

 結論は「人間関係数の増加により、『短時間で深く』が求められるようになったため」と「会話が途切れないため(体験を共有していれば会話できる)」の2つ。いやはや、この理由は衝撃的だ…。

②「若者の趣味の〈情報源〉は何か」

 こちらの結論は、口コミがメインという想定内の結果なのだが、そこにつづく「趣味」に関する彼らのスタンスが意外。「趣味の話は友人とはしない」「趣味は個人でやるもの」というのだ。その趣味が友だちと共通でない場合、自分が主体になって話すことになってしまう、それではコミュニケーションは成立しない、ということらしい。加えて、みんながすぐには理解できないこと、みんなが知らないことを話題にするのはKY、ということにもなるらしい。ま、そういう人いるけど、よく聞いているとものすごくおもしろいんだけどねえ…。

「若者のもの離れ」対策異業種会議 Part 2|クルマ業界(トヨタダイハツ)×ガム業界(ロッテ)×不動産(三井不動産レジデンシャル)の三者による鼎談

 「今の若者はどうなのか」をひたすら掘り下げた前述記事から一転、こちらの記事はとにかく企業が模索に模索を重ねていることがよくわかる、企業寄りの内容になっている。事例として、きわめて有効だと思う。

ゲレンデ発のビッグウェーブ 若者を呼び戻した「マジ☆部」プロジェクト

19歳限定でリフト券を無料提供するキャンペーンにちょってスキー場に若者を呼び戻すことができた、という成功事例。戻ってきたバブルの頃に比べたらまだまだ少ないのだろうけれど。確かに、ここまでの記事で展開されてきた「つながりたい」「イベントで思い出の共有を」といった欲求を満たすには、ゲレンデは最適の場所かもしれない。

 

宣伝会議 2014年 12月号 [雑誌]

宣伝会議 2014年 12月号 [雑誌]

 

 

 

 

 

 

関心なくてもつい見てしまう、へーベルハウスの新聞広告 by五十畑

 一見、奇をてらった広告のようだけれど、実はこの住宅商品の機能性の高さを孫悟空というキャラクターの特性にうまく引っかけて説明をしている。機能性の高さと快適な家を建てて住むことのわくわく感というかエンタメ感というか、これらをシンプルでわかりやすい比喩で、見事に表現していると思った。家に関心がなくても、「西遊記」という物語を知っているなら誰もがつい見てしまう。そんなパワーを秘めた広告。これを提案したクリエイティブチームもすごいけど、これを受け入れた旭化成へーベルハウスの人たちもまたスゴイ。こういうアイデアは、たいてい受け入れられずに終わる運命にあるから…。

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発想するコピーライティング (Brain Books)

発想するコピーライティング (Brain Books)

 
広告コピーってこう書くんだ!読本

広告コピーってこう書くんだ!読本

 

 

ネーミングが広告だ。―「売る広告の素」岩流ネーミング作法

ネーミングが広告だ。―「売る広告の素」岩流ネーミング作法

 

 

 

RYOMA GOLFの超攻撃的挑発的破壊的広告 by五十畑

※すみません、今回から広告紹介や広告手法紹介は「である調」でやります。ご案内は「ですます調」でいきますのでご了承くださいませ。

 

 このブランド、ゴルフをやらないせいかほとんど知らなかったのだが、とにかくスゴイ。ゴルフ=さわやか+緑色+紳士、というイメージを完全に覆して、黒というカラーと攻撃的なコピー、そしてビートたけしという人選で、ブランドを尖らせることに見事に成功している。

ぶっ飛ぶぜ。RYOMA GOLF/リョーマゴルフ 公式サイト

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 もちろん、こういった方向性が多くのゴルフファンの心を打つとは限らないのだが、少なくとも一部の熱狂的なファンを生む起爆剤にはなりうる。尖ったブランディングは尖ったユーザーやファンを集める。朱に交われば赤くなる。いや、この場合は黒に交われば黒くなる、か。自然の摂理だよね。ビートたけしも、最近はあまりテレビでは着ることがなくなったYohji Yamamoto の黒のスーツ(コスチュームドムというビジネスライン)と白いカッターシャツというスタイル。ぼくの敬愛するブランド。Yohjiと言えば黒。このブランドのイメージとも合致する、ってことかな。

 今朝の日経新聞に掲載されていた商品広告も、ただひたすらに攻めている。

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商品への確固たる自信。そして、自分の腕の悪さをすぐに「このクラブが悪いんじゃないか」「このクラブが合わないんじゃないか」と思ってしまいがちな(一部)のゴルフプレイヤーたちの心理(インサイト/潜在ニーズ)に対するメッセージ/プロポジションが明確。こだわりぬいているが、とにかく直球。こういう広告、久しぶりに見た。これが許されるクライアントは少ないからなあ。ぼくもこんな仕事をやってみたい!!

 

 

BROTHER [DVD]

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北野・ざんまい! ~北野武監督作品DVD全集~

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菊次郎の夏 [DVD]

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余生 (ソフトバンク文庫)

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間抜けの構造 (新潮新書)

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北野武の作品はこちら。ぼくの好きな映画は「Dolls」。

 

ついでに

山本耀司。モードの記録。 モードの意味を変えた山本耀司の足跡を探して。

山本耀司。モードの記録。 モードの意味を変えた山本耀司の足跡を探して。

 
MY DEAR BOMB

MY DEAR BOMB

 
服を作る - モードを超えて

服を作る - モードを超えて

 

 

おまけに、役に立つ、わかりやすいブランド入門の本。

つまりこういうことだ!ブランドの授業 (日経ビジネス人文庫)

つまりこういうことだ!ブランドの授業 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

 

梶原美穂個展「世界猫曼荼羅」開催のお知らせ

来月12/4〜14は、いよいよ個展です。
今回は横浜元町のゆめ猫さんでのミニ個展ですが、
こちらも初めての会場なのでドキドキです。

各国の代表猫さんたちを中心とした、にゃんだらカレンダーの原画をずらっと並べます。
世界一周の気分に浸れるかな?(^^)
石なまけちゃんのセミオーダーも承ります!

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DMも完成しました。
ご希望の方にはお送りいたしますのでご連絡ください♪

 



 

公式サイトもよろしく! http://www.catkick.com/namake/

 

「にゃんこエイド」ご報告 by梶原

イベント日和の11/2、大賑わいで高円寺フェス/にゃんこエイド終了しました。
私はにゃんこエイドに初めての参加、しかも自分でお店を構えるのも初めての体験で
いろいろ不備もあったかもしれませんが、楽しい一日でした。
お越しいただいたみなさま、ありがとうございました!
(お手伝いしてくれた販売のプロ・Hちゃんには感謝!!)
また機会があったら参加したいなぁ。

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猫似顔絵を描くのもやっぱり楽しい。
愛情にあふれるお話が聞けるのがなんとも幸せで。
すべての猫が、こんなふうに愛されますように。

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(似顔絵サンプル。猫の額のチャットくんです。)

今回は売上から5.000円を高円寺ニャンダラーズさんに寄付いたしました。
まだまだ頑張る、福島第一原発被害動物レスキューに充ててもらおうと思います。

チャリティーおみくじの小銭はうっかり持ち帰ってしまったので
後日、猫の額さんの募金箱に全額投入します!(すみません・・・)

 

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松屋銀座「真穴みかん写真展」に行ってきました by五十畑

 松屋銀座の6階、だったかな? に、アート系・デザイン系の雑貨を販売しているコーナーがあるのですが、そのスペースの一角で行われていた小さな写真展。規模は小さいですが、そのクオリティと心意気は高い。写真・広川泰士、企画・佐藤卓。みかんの写真はユニークなアングルでおいしさを引き出していたし、風景写真は湾に広がる緑とみかん色のコントラストが鮮やか。農家の皆さんの写真もいい顔、そしていい手をしていた!
 そもそも真穴ミカンとは、愛媛・宇和の風光明媚な段々畑で栽培される、薄い皮と甘さ、そしてほどよい酸味が特徴のミカン。食べたことはないのですが、写真で見ると小振りな印象。こちらのサイト(http://www.marumamikan.com/)に詳しい情報があります。展示されていた写真の一部も掲載されていた。シンプルだが美しいデザインのサイト。たぶん佐藤さん・広川さんがつくったのではないかと推測。通販もやっているようなので、一度食べてみようかな…。

 

真穴みかん

真穴みかん

 

 

 

 

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最新広告手法「ネイティブアド」とは? by五十畑

宣伝会議」2014年12月号、巻頭特集は「ネイティブアド」。聞きなれない言葉ですが、自分の言葉でまとめてみると

「(たとえばGizmodoみたいな)情報発信型のWebサイトにおいて、通常のコンテンツと自然に(native)なじんでいるんだけど、実は広告だという、ものすごく作り込んだ、情報の質を重視した広告コンテンツ」

 ってことになるのかな。ぼくの場合、コピーライターとして雑誌や新聞に掲載する記事広告(記事の体裁をした広告。人によっては毛嫌いされるが、嫌われても仕方ない程度のクオリティの記事広告が大半を占めているのも事実…)を担当する機会は割と多いのですが、この「記事広告」の手法がWebで使われると、ネイティブアドと呼ばれることになります。しかし、インタラクティブであり、SNSと直結して情報が(よくも悪くも)拡散しやすいという性格を持っている点が、紙媒体の記事広告とは大きく異なります。一歩間違えると「ステルスマーケティング」の末路のように、出稿した企業も掲載したメディアも、かなり手痛いダメージを被る可能性があるかもしれません。「炎上」のリスクを理解した上で、それを回避できる内容や表現が必須だと思います。

 

宣伝会議」に載っていたネイティブアドを説明する記事を要約すると、こんな感じです。

●コントロールしにくい環境の中でどう広告に接してもらうかという課題の中で登場したのがネイティブアド
●定義は「ページの内容やデザイン、プラットフォームの動作と合致することで、ユーザーがサイトの一部として違和感を持たない広告」
●情報サイトの各コンテンツになじむ形で掲出されるため従来の記事広告的な手法ではあるが、広義的には、検索エンジンの検索結果の上部に表示される広告や、LINEのスポンサー付き無料スタンプも含まれる
●従来のCMのように一方的に「見せる」のではなく、ユーザー(読者でも視聴者でもない!)から「使われる」ことを前提にしている
●広告は、露出する「量」から「質」へと移行しており、ネイティブアドにはそんな特性もある。コンテンツ性を高めなければ結果が出にくい

  雑誌本体にはタイプの分類や成功事例も豊富に掲載されていますので、興味のある方はご一読を。

 

 最近は、「宣伝会議」「販促会議」をスミまで読み込むことが増えました。それくらい勉強しておかないと、コピーライターとしてというよりも、プランナーとしてやっていけなくなってしまいつつあるから。やはり体系的に最新マーケット動向や広告・販促手法を管理し展開できている大手広告代理店はスゴイと思う。ぼくのようにフリーでやっている場合、泥臭いお勉強をつづけるしか手だてがないんですよ。ううう。

 

 

宣伝会議 2014年 12月号 [雑誌]

宣伝会議 2014年 12月号 [雑誌]

 

 


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