アシックスのブランド体験 店頭なくしてブランディングなし! by五十畑
実はランニングが好きなワタクシ
8月16日は日曜日。新宿へ買い物に行きました。立ち寄る機会が多い小田急百貨店の別館「ハルク」は、スポーツ用品売り場が充実しているのが特徴。ぼくはランニングが好きなのですが、ここ数ヵ月、膝のケガに悩まされ続けています。その前はスネの外側の腱の痛み。その前はふくらはぎの肉離れでした。とにかくケガが多い。念入りにストレッチしているのに、そして体は硬いほうではないのにもかかわらず、です。ただ、心当たりがありました。ここ数年、ショップで勧められるランニングシューズのサイズがでかくなってきている。以前は25.5cmがベストだったのですが、最近は26.5を勧められて履いているのですが、それからケガが増えたような…。
アシックス直営店の「足型測定サービス」へ
ケガの原因究明と今後の対策になれば、と、ハルクに入っているアシックスの直営店で、無料の足型測定をしてもらいました。足長、幅、甲の高さはもちろん、土踏まずの高さ、専門用語でいうプロネーション、足指の角度など、かなり科学的に細かく分析してもらえます。
最悪に近かったアシックスのブランドイメージ
実はぼくは、アシックスにはあまりいい思い出がありません。ケガが増えたのはこのブランドで買ったGT-2000というモデルを履きはじめてからですし、陸上部で三段跳びをしていた学生時代は、アシックスのシューズでかかとの軟骨をつぶしてしまったことがあります。ブランドイメージは最悪とまでは言いませんが、かなり悪かったのは確かです。デザインにも不満がありました。強いメッセージを発信しているナイキやアディダス、ニューバランスなどのほうが共感できるし。測定が済んだら、ありがとうございます、とお礼を言って立ち去ってもいいかな、くらいに考えていました。この時点で、新しいシューズを買う意思はゼロです。
測定自体は5分程度で終わります。ぼくの場合は、足の長さは25cmに満たない、成人男性としてはかなり小さめのサイズでした。そして右足のみ幅が比較的広く、おまけに甲も高め。そして驚いたのが、足の指が普通の人よりもかなり扇状に広がった形態をしていました。プロネーションはオーバー(足首が内側に少し傾いている)でした。
店頭体験でブランドイメージが変わった!
この結果を見せてもらうだけでも衝撃的だったのですが、驚いたのはここから。ここしばらく、こちらで大きめのサイズのシューズを勧められて買ってしまってから、ケガが増えたことを話してしまいました。半分いじわるな気持ちがあったかもしれません。しかし、店員さんは真摯に対応してくださいました。これまで履いていたシューズの底のすり減り方を尋ねられたので答えると、その減り方から考えるとオーバープロネーションではないらしく、どうやらぼくの場合、走っているときはむしろ足が外側重心になっているのではないか、と指摘されたのです。言われてみれば、その通りだと思います。足の裏の体重移動は外側中心になっているのは自覚できていたので、足首がこのとき内傾している可能性は低い。実に論理的な解釈ですよね。以前のシューズでケガをしたのは、サイズが大きかったこと、そしてオーバープロネーション対応のシューズだが実はぼくはオーバープロネーションではなかったということの二点が遠因になっていたのではないか、と店員さんが推測してくれました。ぼくは完全に納得。すごい店員さんだ、と感心しました。もう、この時点でぼくにはブランドに対する不信感はほとんどなくなってしまっています。この話の流れで最適なシューズを提案してくれたら、そりゃ、買うしかありませんよね。何足か試し履きをした結果、GEL-CUMULUSという初心者ランナーのレース用シューズと、ぼくの足に最適なソックスを1足購入しました。膝を故障したぼくのコンディションを考慮してのチョイスです。ベストな買い物ができたと思っています(実際に走ってみないとわからないですけどね…)。
[アシックス] Asics GEL-CUMULUS 17 TJG743 3901 (エレクトリックブルー/ホワイト/26.0)
- 出版社/メーカー: ASICS
- メディア: ウェア&シューズ
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店頭なくしてブランディングなし!
ぼくはプランナー兼コピーライターです。戦略や施策展開、販促ツールの構成や広告表現などを考え、カタチにするのが仕事です。しかし、実際に消費者が商品とリアルに接するのは売り場。そして、消費者が購入を決意するのも、ほとんどの場合は売り場です。ブランディングでどんなによいイメージを展開しても、どんなに共感できるメッセージを発信しても、それはあくまで、店頭に行くまでの話。店頭体験こそが、ブランドと購買行動をクロージングさせるのだなあ、と痛感した出来事でした。
地味かもしれないけれどすごく気になる龍角散の広告 by五十畑
2015年8月10日の朝日新聞朝刊に掲載された広告です。弊社制作ではありません。
志の輔師匠をキャラクターに起用したのが、ターゲット的にも商品特徴的にもうまいなあ、と思うのですが、もっと気になっているのはキャッチフレーズ。「はじめる前にも」という部分です。
今まで、龍角散といえば痰切りのために使うことが多かったのではないでしょうか。それが、長丁場を一人でしゃべらなければいけないときに、のど荒れの予防的に使うのも効果的ですよ、ということを伝えたいのだと思います。志の輔師匠は噺家ですが、プレゼンテーションするとき、外で声を張り上げてビラを配るとき、結婚披露宴でスピーチするとき…などなど、意外に「はじめる前に(も)、龍角散。」という利用シーンは多い気がします。
この切り口も、一種の「インサイト」と捉えていいのでしょう。人前に出るときの、支えが欲しい。ここぞ、というときの支えが欲しい。これらが今回のインサイトです、たぶん。うん、勉強になるなあ。
オリンピックロゴ問題について ——問題は「機能するか否か」だよ by五十畑
あちこちで話題になっていますが…。一つだけ言いたいことがあります。
それは、議論の中心が「表現」や「制作のプロセス」だけになってしまっているということ。ベルギー側はデザイナーが提訴すると言っているようです。要するに「オマエ、オレのデザインをパクッたろ」ですよね。でも、これってよく考えると、ユーザーや一般市民にとってはどうでもいいこと。問題は、おなじロゴであることで「誤認」が生じるかどうかなのでは? 東京オリンピックの告知や施設案内かと思ったら、シアターだった。そんな状況は、国も使用目的も掲出場所も異なるはずなので、まず起こりえない。ものすごく大騒ぎになっていますが、ぼくらがオリンピックの準備を進めたりオリンピックを楽しんだりする行為自体には、実はほとんど影響を及ぼさないのです。ま、「パクリロゴを使ってるのかも」という心理的な影響はありますが。尊厳の問題でもあります。
表現は人間の存在の根底や尊厳、さらには社会基盤に関わる重要な要素であるのは確かだし、ぼくも表現することは好き、そして何よりも大切にしてはいます。しかし、デザインは芸術ではない。自己表現ではなく他者のために行われるものであり、突き詰めると機能(使いやすさ、便利さだけでなく、美しさが心に及ぼす影響という意味も含めて)ということになる。その観点から考えたら、今回のパクリ問題を、デザイナーの表現(=創造のプロセス)の観点からのみ受けとるのは、ちょっとおかしい気がします。心理的効果も含めた「機能」の面から冷静に考えると、答えが見えてくるのでは?
8月18日追記
某飲料メーカーのキャンペーン商品でも話題になってしまっていますね。残念です。こうなってくると、オリンピックロゴについてもプロセスを徹底検証する必要があるのかもしれません。
先行する作品を参考にするということは、この業界ではよくあること。ただし、そのまま使うというのは絶対にありえません。この問題がきっかけになってグラフィックデザインや広告の世界全体が疑惑につつまれてしまうのは本当に悲しい…。
ロットリング ワークショップ@rOtring Caféに参加しました by五十畑
黒田潔さんが講師を務めたロットリングのワークショップでノートをいただいた。ペンは自前です。
この本↓のイラストは黒田氏によるもの。
伊勢丹相模原店・猫展出展終了しました by梶原
伊勢丹相模原店での猫展、無事終了しました。
(明日から店舗入れ替わっての後半がスタート、8/11まで開催です)
ブースを借りて、自分で販売をするスタイルの猫展参加は初めての経験でした。
毎日、片道1時間半の通勤+開店から閉店までの接客はものすごーく大変でしたが
たくさんの方に喜んでいただけて、とても楽しく、有意義な1週間でした。
ふだんは個展とギャラリーの企画展を中心に動いているので
長時間作家さんたちとお話をすることが少ないのですが、
今回はいろいろ話し込んで、イベントやお店の情報交換だけでなく
画材のことやらテクニックのことやら大先輩にもお聞きできて
ものすごく勉強になりました。
やっぱり人と会うっていいなぁ。
ところで今回感じた不思議。
石なまけちゃん(パワーストーンに猫がくっついたお守り)のコーナーで
手をかざしてパワーを感じつつ選ぶ方や、波動のわかる方などが
複数いらっしゃったこと。
おまけにペンデュラム(振り子の動きでイエス・ノーを判断する占いグッズ)も
驚くほどの売れ行きでした。
相模原ってスピリチュアルな土地なのかしら?
ペンデュラムは猫展では特殊なアイテムなので、お客さまに説明するために実演しているのですが
2日めからは急に動き方が変わりました。
初日に「イエス」が時計回り、「ノー」が停止、というサインだったのに
2日め以降はどのペンデュラムを使っても、「イエス」は縦揺れに。
ふっしぎー。
なんなんでしょうね?
地場?
手のひらにくっきりと神秘十字が刻まれたお客さまが
「いい石なのに、やっぱりちょっと疲れてるわねー」とおっしゃったので
次の日からは音叉を持って行って鳴らしまくったりしてたんですけどね。
しかもスピリチュアルに抵抗のないお客さまにはその場で浄化サービスしたりして。
けっこうアヤシイ人だったかも。
そんなこんなの1週間でした。
会場にお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。
スタッフのみなさま、作家のみなさま、お世話になりました。
またお目にかかれますように。
違和感で掴むということ by五十畑
こちら、今朝の朝日新聞朝刊に掲載されていた全5段の広告。アラクスの定番頭痛薬ブランド「ノーシン」の新商品の告知広告ですが…キャッチフレーズが、まったく医薬品らしくない。
メッセージだけ取り出すと、クスリのことなんてまったく語っていないわけです。
新商品の登場を、強い違和感とともに訴求する。こういうやりかたもあるんですよね。でもこういう手法もまた、昨日のシャーク中吊りのように、さまざまな反対意見にあって実現できないことのほうが多い気がします。
一方で、こんな疑問も湧いてきます。本当に消費者は、「新しい頭痛薬と出会いたがっているのか」ということです。表面的には、誰もそんなもの、求めていないと思います。自分にはノーシンが合う、自分にはセデスが合う、だからいつもこれを買う。そういう思い込みで消費を繰り返すパターンって、実はすごく多い。でもでもよくよく考えてみると、その頭痛薬がホントに自分にとってベストかなんて、わからない。ひょっとしたら、もっといいクスリがあるかもしれない。自分に合っているというのは思い込みに過ぎないのかもしれない。それよりも、医薬界の技術革新に目を向けて新しいクスリを試したほうが、もっといいクスリに出会える確率は高いのかもしれない。
と書きましたが、慣れたクスリを変えるというのは、ほかの消費財のブランドスイッチよりもはるかにハードルが高い。この広告では、その「ブランドスイッチ」のみに焦点をあてている、ということなのだと思う。
この手法、新商品の発売直後しか使えないような気がします。今後、このメッセージはどう変容していくのか。注目しようと思います。
掟破りなアイデアを提案するということ by五十畑
Yahoo!ニュースで、「中吊り広告をサメが食べちゃった」という情報が取り上げられています。
確かに素晴らしいアイデアですよね。「目からうろこ」的な意見がネットで飛び交っています。でもでも…実はこういう方向のアイデア、クリエイター的には決して誰も発想できないようなことではないと思います。優秀な人なら、きっとここにたどり着ける。私はどうか、と言われるとわかりませんが(笑)。
この広告がスゴい点は
- 商品特徴を的確かつ強く目を引くかたちで表現できている。
- 規定されている媒体の仕様をはみ出してデザインされている。
- 印刷・加工などの手間を度外視してアイデアを優先させている。
の3つだと思いますが、特にスゲエのが2と3。この2つ、実はクリエイターにとって大きな問題になりがちなのです。
クリエイターにとって問題なのは、こういった掟破りな発想ができるか否かに加えて、実現できるか否かだと思います。これは個人的な意見ですが、仕様からはみ出した提案や今までになかった提案をしても、とにかくツブされてしまうことが多い。「可読性が悪い」「いたずらと思われる」「手間がかかる」「予算がかかる」「媒体社に確認したり交渉したりしないと」などなどの意見や大人の事情が壁になって、最終的には実現できないのです。こんな経験が繰り返されると、クリエイターの多くは、こういうアイデアを提案すること自体がイヤになってしまうか、提案すること自体(の意欲やおもしろさ)を忘れてしまうクリエイターは、決して少なくない。
この企画の発想力と実現させたエネルギー、尊敬に値します。