スタジオ・キャットキック

広告・販促の企画・コピーライティングを手掛ける五十畑裕詞と、猫作家・イラストレーターの梶原美穂が所属する会社です。http://www.catkick.com/

オリンピックロゴ問題について ——問題は「機能するか否か」だよ by五十畑

 あちこちで話題になっていますが…。一つだけ言いたいことがあります。

 それは、議論の中心が「表現」や「制作のプロセス」だけになってしまっているということ。ベルギー側はデザイナーが提訴すると言っているようです。要するに「オマエ、オレのデザインをパクッたろ」ですよね。でも、これってよく考えると、ユーザーや一般市民にとってはどうでもいいこと。問題は、おなじロゴであることで「誤認」が生じるかどうかなのでは? 東京オリンピックの告知や施設案内かと思ったら、シアターだった。そんな状況は、国も使用目的も掲出場所も異なるはずなので、まず起こりえない。ものすごく大騒ぎになっていますが、ぼくらがオリンピックの準備を進めたりオリンピックを楽しんだりする行為自体には、実はほとんど影響を及ぼさないのです。ま、「パクリロゴを使ってるのかも」という心理的な影響はありますが。尊厳の問題でもあります。

 表現は人間の存在の根底や尊厳、さらには社会基盤に関わる重要な要素であるのは確かだし、ぼくも表現することは好き、そして何よりも大切にしてはいます。しかし、デザインは芸術ではない。自己表現ではなく他者のために行われるものであり、突き詰めると機能(使いやすさ、便利さだけでなく、美しさが心に及ぼす影響という意味も含めて)ということになる。その観点から考えたら、今回のパクリ問題を、デザイナーの表現(=創造のプロセス)の観点からのみ受けとるのは、ちょっとおかしい気がします。心理的効果も含めた「機能」の面から冷静に考えると、答えが見えてくるのでは?

 

8月18日追記

 某飲料メーカーのキャンペーン商品でも話題になってしまっていますね。残念です。こうなってくると、オリンピックロゴについてもプロセスを徹底検証する必要があるのかもしれません。

 先行する作品を参考にするということは、この業界ではよくあること。ただし、そのまま使うというのは絶対にありえません。この問題がきっかけになってグラフィックデザインや広告の世界全体が疑惑につつまれてしまうのは本当に悲しい…。