メディアの役割の一時的な変化と「今すべきこと」について
今日は事例や実績ではなく、最近思ったこと。
最近の新聞広告は通販ばかり。新商品発売訴求のものも、ブランディング訴求のものも、CSR訴求のものも、かなり減ってきました。今の社会だからこそ発信すべきメッセージもあると思うのだけれど。
一方で、いろんな会社が「STAY HOME」のためのアイデアをどんどんカタチにしてる。例えばスポーツ系では、ナイキはスマホ用のアプリでエクササイズの生配信をしているし、アシックスからはこんなメールが届きました。ほんの少し、勇気がもらえるメッセージ。
メディアの役割がどんどん変化しています。ブランドからのメッセージはオンラインを通じての参加というスタイルによって、体験とこれまで以上にダイレクトにつながりはじめたように思えます。「オフラインならではの顧客体験を」という考え方が、今だけではありますが、通用しなくなりました。アフターコロナの社会は、確実に価値観が変わる。そして、メディアとの関わり方も変わるのだと思います。ただし、揺り戻しによって再び今までと同じスタイルに落ち着く可能性も、なくはない。
一方で、通販事業者はこれまでと変わらぬ「あなたの悩みが改善される」「安く手に入る」といったベネフィットをフックに、これまでとまったく変わらぬ姿勢を貫いているように見えます。特に顕著なのが健康食品系と美容経。これは一見すると社会の流れとはまったく関係がないように見えますが、実は今の状況が「健康を、年齢を、あるいは自分自身そのものを見直す機会」を与えているのかもしれません。
ぼくたちは、今できること、今すべきことを、STAY HOMEという環境のもとでどんどん推し進める必要がありますが、そこには「未来を予測しておく」というタスクも含まれています。当社もじっくり考え、収束後には何らかのアクションを起こしたいと思います。
最後に、昨日アシックスから届いたEメールを引用させていただきます。こんなメッセージは、今だからこそ心に響く…。ぼくたちも、こんな仕事をしていきたいと強く思いました。
某玩具メーカー 男性幼児向け定番玩具 ブランディング企画
【背景と目的】愛され続けるためのブランド再定義
今回ご紹介するのは、某玩具メーカーが長年に渡り販売しつづけている、ある男の子向けの定番玩具のブランディング案件です。こちらも詳しくは書けないのですが、すでに数十年の歴史を持つ商品で、早いと2歳くらいから遊び始めているようです。ま、このくらいの年代ではお父さんが遊んであげている、という感じのようですが。しかし、5歳くらいになると興味が戦隊ヒーロー物やテレビゲームなどに移行してしまい、ごく一部の子ども以外は「卒業」してしまうという問題点がありました。要するに、使用期間が短いので、どうしてもライフタイムバリューが小さくなるのです。
この商品の特徴は、以下の3つ。
●組み立て要素がある。
●実社会に存在するものである。
●購入者とユーザーが異なる。(親が子に買い与える)
この商品には、1つの大きな競合玩具があります。世界的な組み立て玩具のロングセラー「レゴ」です。
レゴには明確なブランドバリューが設定されており、ブレない商品展開を頑固にし続けているため、親が安心して買い与え、かつ親たち自身も楽しむという遊び方が確立しており、さらには高学年になっても遊べるという強みすらあります。
こんな市場動向も考慮した上で、改めてロングセラー商品としてこの商品のブランド価値を定義しなおし、ブレない商品開発を実現したい。そんなご依頼を受けました。
【考え方①】魅力は何なのか?
そこで、まずは徹底的に市場を分析することに。といっても、事実上フリーランスのコピーライター兼プランナーが大がかりな市場調査をすることはできません。かけられる予算も限られています。そこで、以下について徹底的に分析をすることにしました。
●レゴとのブランド価値の比較(ターゲット、ラインナップ、世界観、遊び方、子どもたちが感じるイメージ、総合的な強み、「ミッション」「ビジョン」「スピリット」といったブランド定義)
●年齢ごと/成長段階ごとのターゲットの玩具利用状況および成育の傾向(幼児向け雑誌、幼児向け玩具の対象年齢記載、育児書などを参考に作成)
●年齢ごと/成長段階ごとに提供できる、本商品の価値・楽しさ・遊び方
これらの分析結果から、本商品の最大の魅力は「社会に対する想像力を、果てしなく広げるきっかけになること」にある、と考えました(ちなみにレゴの場合は、もっと広い意味での「想像力」、そして「創造力」です)。さらに、この魅力を8項目に細分化。これらを「ブランディングに活かすべき強み」としました。一部を抜粋すると、こんな感じです(表現は変えています)。
●年齢に応じた自分なりの遊び方で、想像あそびができる。
●現実性・社会性が高い。現実世界に根ざした、リアルな魅力がある。
●ギミックなどが超現実的。本物とは違った、非現実的なおもしろさもある。
●秩序的に遊べる。
●ロングセラーなので、親世代(+祖父世代)も遊んでいる。
●他の創造系玩具よりも親子など、複数で遊びやすい。遊びを通じて子どもをほめやすい。
【考え方②】ブランディングを「売上」に貢献させるには?
レゴという強力なブランドと商品開発面で対等に戦い、売上という結果を出すためにはどんなブランディングが適しているのか…ということもこの案件では重視しました。そこで、先に挙げた「ブランディングに活かすべき強み」をベースに、基本方針を設定することに。こんな感じです(表現は変えています)。
●遊ぶ期間の5歳以上への引き延ばしや流出の食い止めを実現するのは、子どもの成長を考えると困難。遊ぶ期間内での購入回数・購入金額を増やせる商品を投入することを重視する。
●逆に、これまでの長い歴史の中で積み上げてきた「△△△」「□□□□」といったブランド資産は大切にする。
●レゴと戦う際に、「創造性」で勝負しない。本商品のブランド価値は「創造性」以外にあると考える。ほかの切り口から、子どもたちを夢中にし、かつ保護者の支持を集められることを重視する。
●年齢や成長度合いに応じた遊び方を意識した商品開発やラインナップ構成で、遊ぶ期間内での買い足しを恒例化(回数増加)させる。
【考え方③】ブランド価値を定義する
ここまでの考察をベースに、ロイヤルティ(忠誠度)、ブランド認知、知覚品質、ブランド連想、その他の価値…などのブランド価値を再整理。ブランドアイデンティティとして構築しなおしました。
●コアバリュー(中心的価値)
●ブランド属性(特性、価格帯、使用者、購入者、利用シーン)
●機能価値(遊び方)
●情緒価値(提供できる楽しさ、面白さ)
●理想顧客像(購入者、ユーザー)
●ブランドパーソナリティ(ブランドを人に喩えると…)
また、ブランドの体験価値やタッチポイント、購入動機、コミュニケーションの流れ…などもカスタマージャーニー的に整理しました。
【考え方④】最終的に、5要素に集約
ここまで掘り下げてから広げたブランドの構成要素を、最終的には以下の5つのポイントにまとめました。それぞれをどんな言葉で定義づけたかはここでは紹介しませんが、5つのポイントだけは記載しておきます。
①ブランドビジョン…目指すこと、将来必ず実現したいこと
②ブランドコンセプト…お客さまに対する約束
③コアバリュー…お客さまに提供する価値の中心となるもの
④ブランドオリジン…ブランドの原点となるもの。ロングセラー/ブランドストーリーの出発点
⑤カスタマーイメージ…ブランドをお届けしたいお客さまの姿
【最後に】で、その後は…
このようなブランド考察をベースに、クライアントの商品開発担当者が社内の視点・商品をつくる者の視点から、当社で作成した定義をアレンジした上で活用されている、とのことですが…実は、この案件を手掛けたのは4〜5年前。その後のこのブランドの展開を見ていると、かなり新しい要素が加えられているかな、と感じます。急速に発達したIoT技術が、新たな展開を生み出したようです。ちょっと残念ですが、最近の動きにはノータッチの状態。しかし、チャンスがあればまた、何らかのカタチで関わりたいと思っています。
当社では、いわゆる制作業務だけでなく、その前段階とも言うべきブランディングの「理念面・哲学面」の構築も支援しています。プロモーション施策のプランニング同様、課題が見えてこないような案件も、緻密な分析や状況整理を重ねることで課題を抽出し、基本方針の策定を導き出せるよう心がけています。こういった考え方が必要…という方、ぜひご相談ください。
ご相談は、当社公式サイト最下段の「Any Question?」欄(お問い合わせフォーム)からお気軽にどうぞ。
それでは、See you!
某生命保険会社 認定代理店制度支援施策
【施策概要】認定代理店制度を盛り上げたい!
今回ご紹介するのは、とある生命保険会社の案件。例によって匿名、そして現物はお見せできないのですが…。
この企業では、自社の営業担当者が直接保険商品を顧客に提案・販売する事業とは別に、各地域に根ざした保険代理店に提案・販売をしてもらう代理店販売事業も展開しています。代理店は手数料収入を得ることで事業を成立させるわけですが、当然ながらこの保険会社の商品や仕組みを熟知し、顧客のニーズとうまくマッチングさせる必要があります。この生命保険会社ではこの部分を支援する「代理店支援」にかなりチカラを入れています。単に支援のためのツールを提供するのではなく、特にこの会社の保険商品の取扱高が大きく、かつ提案能力などの高い代理店を「認定代理店」として優遇する制度を数年前から展開。取引のある代理店から候補を抽出し、「認定代理店になりませんか?」と声をかけています。認定のハードルは高いものの、認定されれば特別な営業支援サービスを受けることができるので、モチベーションの高い代理店を中心に、相当数の代理店が認定を取得。かなり効果を上げているようですが、認定代理店の数はもっともっと増やしたい。某代理店に、この認定代理店制度を活性化させるための提案をしてほしい、という依頼がきました。そこでぼくの出番です。
【与件】重複が…
現在、この生命保険会社が行っている施策は、イントラネットで制度に関する情報をまとめている他は、「認定代理店になりませんか?」という趣旨をまとめたパンフレットを制作している程度。数種類が存在しますが、内容が重複していたり、役割も明確になっていなかったり…と問題が生じていました。まずはこの状況の整理が必要。さらに制度全体を盛り上げるためには何が必要なのか…そこを提案してほしい、とのことでした。
【考え方/提案内容】パンフレットは集約を。そして「認定後」の施策展開も!
まず、複数存在するパンフレットの統合化を提案。すべての情報を網羅しているだけでなく、保険会社の担当者が代理店に対して説明や提案がしやすくなるような表現および全体構成を提案しました。これに伴い、イントラネットの情報強化も同時に提案。さらに、イントラネットの情報をコンパクトにまとめてスマホやタブレットで閲覧するための電子パンフも提案しました。これらによって、代理店の関心や認定意欲を刺激し、認定申請へと導きます。
しかし、認定代理店を増やすだけでは制度は盛り上がりません。認定代理店がその後もモチベーションを維持・向上できるよう、会報誌や会員専用Webサイト、メルマガなどでの情報発信もあわせて提案しました。
現在、これらの提案の実現に向けて、準備が進んでいます。
【最後に】新規顧客だけでなく、既存顧客にも目を向けて
プロモーションを企画する際、新規の獲得ばかりに目が行ってしまうことは多いようです。しかし一般的には、新規を獲得するよりも、既存の顧客を維持することのほうが、実は数年単位で見ると利益が大きくなるようです。確か、新規獲得に必要なコストは、既存顧客の維持・活性化の数十倍、なんてデータもあったような…BtoCでもBtoBでも、この傾向は変わらないと思います。今回も、新規だけでなく既存まで目を向けた提案を行うことで、生命保険会社様(と代理店様)にとっての大きな利益につながるのではないか、と思っています。
当社では、パンフレットの制作だけでなく、こういった全体戦略の企画提案も支援しています。課題が見えてこないような案件も、緻密な分析や状況整理を重ねることで課題を抽出し、基本方針の策定を導き出せるよう心がけています。こういった考え方が必要…という方、ぜひご相談ください。
ご相談は、当社公式サイト最下段の「Any Question?」欄(お問い合わせフォーム)からお気軽にどうぞ。
それでは、See you!
某商社・ビジネスジェット販促パンフレット制作 by五十畑
久々の事例紹介。今回はパンフレットです。しかし、扱う商品が超特殊。ぼくが手掛けた販促ツール類の中で、おそらく1点あたりの単価が最高額じゃないかな。
自前のジェット機。需要はある!
ビジネスジェット。プライベートジェットという言い方もありますが、要するに、企業や個人が自前で保有するジェット機のことです。大企業の重役や、グローバルに活動を展開しているセレブが使うもの、というイメージがありますが、国土の広いアメリカでは、商談を効率化するために一般的な企業も導入しているケースがあるそうです。実際、移動時間や宿泊時間を考えると1週間で3カ所しか回れなかった出張が、7カ所、8カ所と回れるようになるそうです。機体の維持費やパイロットの手配費用、燃料なども含めて、十分にペイできる企業にとっては是非導入したいところですよね。日本では、ホリエモンがビジネス仲間数名とビジネスジェットを購入したことがちょっと話題にもなりました。今、新型コロナウイルスが話題になっていますが、ビジネスジェットの場合は旅客機と違って大勢が乗り合わせる必要がないため、感染症リスクも低くなるんじゃないかな。
市場が特殊で、情報も少ない! でも、つくれます♪
代理店からのオーダーは、6ページのパンフレットの構成、コピーライティング。目的は営業担当者がファーストアプローチする際の説明資料としての利用で、ビジネスジェットのメリットとその魅力を伝えることが目的。超高額商品なので、パンフレットだけで売れるものではありませんが、最初に好印象を与えて潜在ニーズを喚起するためにも、非常に重要な役割をになっています。
で、競合となる商社や商品、そしてユーザーの声をいろいろ調べたのですが…商品が特殊すぎて、あまり情報がない! しかし国内にはビジネスジェットを普及させるための業界団体があり、そこで情報発信していました。ごくわずかですが保有者もおり、試乗した経験のある人がブログなどに情報をアップしています。これらも参考にしつつ、あとは海外にある今回のビジネスジェットのメーカーの内部資料、カタログ、Webサイトなどを(その大半は英語でしたが)じっくり読みながら台割を構成してご提案しました。大変だったけど、おもしろかったなあ。未知の情報の連続。刺激になります。表紙には、「自分自身の翼で世界中を自由に駆け巡る」というイメージで、ブランディングも意識した英文キャッチコピーを開発。中面はメリットの具体的な訴求や機体の紹介、運用時のサポート体制など、必要な情報をコンパクトにまとめました。
結局「6ページじゃ足りないよね」ということになり、中綴じ8ページ+片カンノン2ページの10ページという変則仕様で再度構成することになりました。台割はこんな感じです。表紙(1ページ目)と最初の見開きでイメージをしっかり表現し、あとはセールス/提案の際に必要な最小限の情報(といってもかなりの量がありましたが)を、片カンノンという仕様をうまく活かしながら展開していきました。
制作データ
●A4判/10ページ 4色カラー
●当社担当:構成、コピーライティング(デザインは代理店様が内製)
当社では、この「ビジネスジェット」のような、市場は存在するけれど特殊な案件もよく手掛けています。お困りでしたら、ぜひご相談ください。
それでは、See you!
青木野枝「霧と鉄と山と」 by 五十畑
ワタクシ、最近は某金融会社のパンフレット、また別の金融会社のパンフレット、通販会社のとあるプロジェクト、某男性美容系企業のパンフレット3件、などなどを粛々と、しかし楽しみながら進めています。1月は企画関連の案件も多かったのですが、2月に入ると制作系案件が大半に。常にコピーライターのスイッチがオンになっています。
今回の更新はアート関連。当社、企業カレンダーのコンセプトづくりや解説コピーの作成も手掛けるため、というのは口実で、単純に美術が好きなので、できる限り美術展に行っています。今日は府中市美術館で開催中の女性彫刻家の展覧会へ。
日曜美術館のアートシーンや、「美術手帖」だったかな、のサイトで紹介されていて気になったので行ってみた。メインで使われているのは鉄。近くで見ると切断したり溶接したりビス留めしたりガラスをはめ込んだり、とかなり無骨な作り方をしているというのに、いずれも数メートルはある大きな彫刻たちはなぜか軽やかで、生命的で、かつ都市のようにも見える。都市とは人々の生活の集合体だが、そのための場でもあり、場としての都市は無機質だ。だが、有機的である。そんな都市のような二面性を、今回の作品からも感じた。
常設展も見応えあったなあ。
▼府中市美術館のサイトより。
三鷹市美術ギャラリー「壁に世界をみる ——吉田穂高」
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今年初の投稿は、美術展の話題です。
吉田穂高。以前、ある企業のカレンダーの企画で作品を使わせていただき、不肖ながらぼくが解説を書いた洋画家/版画家の吉田博の息子さんです。父親とは違いかなり前衛的な作風だとは聞いていたのだけれど、作品を実際に鑑賞したことはありませんでした。驚いたのは、その抽象性、そして時代性。60年代頃の作品は完全な抽象画で、これを主に木版画で展開しているのが二重の驚き。岡本太郎もかくや、というほどの熱いエネルギーと躍動性、そして抽象画には基本的に感じられることが少ない空間性に満ちた、不思議な作風。父親同様に旅好きだったようで、中南米の影響があるようなのですが、正直言って作品からではまったくわからない。そして70年代以降は、池田満寿夫や横尾忠則のような具象性があるのに異質な感覚に満ちた「ここなんだけど、ここじゃない」という雰囲気の作品が多くなります。この時代の空気を感じました。こちらは木版に写真印刷の亜鉛凸版という技術を組み合わせた独自の手法を用いているそうです。コラージュの作品も多かったなあ。
穂高氏が自分の作風を確立させるまでの道のりも感じられて、とてもいい企画展でした。
某総合美容・健康メーカー 化粧品ブランディング定義ツール制作 by五十畑
今回はブランディング案件です。といっても、当社がブランディング自体に参加したわけではありません。短く表現すれば「ブランドの価値およびその体系を言語化する」というお仕事でした。今回も例によって、クライアント名やブランド名は明かせません。ごめんなさい。
カリスマが率いる急成長集団
クライアントは、ここ数年急成長を続ける美容・健康メーカー。ある美容機器がその機能・効果と洗練されたデザインで大ヒットし、現在は美容機器だけでなくフィットネス/エクササイズの領域にも進出されています。社長が波瀾万丈な青春期を過ごして一代で財を築いた方で、驚くほどのカリスマ性と才能があります。役員・社員はみな、その人間性に惹かれて入社しているようです。
迷子になりかけたブランド価値
当社に声がかかったのは、このメーカーが新たに手掛けたスキンケア化粧品ライン。これも名前は明かせませんが、某海外セレブとのコラボレーションブランドです。原料や製法、そしてプロダクトデザインへのこだわりが見事に一つの世界観を構築している、まったくスキのないブランド。某セレブは商品開発のために名前を貸しているだけではなく、自身のおかかえスキンケア担当者を商品開発リーダーに指名し、自分が特別調合させている美容液のノウハウを提供するなど、積極的に関わっています。
完璧な世界観を持つ、スキのないブランド。しかし、ただ一つ問題がありました。そのブランドの世界観がある特定のコンシューマー層にとって大きな魅力となるのは間違いありません。一方で…その顧客価値があまりにスゴすぎて、誰も定義化・明文化・体系化できなかったのです。代理店から声をかけられときのテーマは、以下のような感じでした。
スゴいけど理解しきれないブランドの本質を、社員や販売員がわかるように教材化したいという依頼を受けた。なんとかなりそうですか?
整理すれば、道は見つかる
当社は商品の試用(五十畑は男性ですが、試用しましたw)、全商品開発・マーケティング資料の読み込み、担当役員や開発担当者への長時間にわたるヒアリングなどを重ねて膨大な情報を集め、「こういうことなのでは?」というブランド価値の体系化およびストーリー化のアイデアを提示しました。
作業プロセスにおいて、特に工夫したことはありません。膨大な情報を整理し、徹底的に理解する。そして見えなくなっていた情報同士のつながりを見つけ出し、それを言葉として表現する。ただ、それだけです。多くの場合、状況の整理さえすれば解決策は見つかります。…今回の場合、膨大な時間が必要でしたが。
さらに成長し続けるブランド
社員向けセミナー用教材や常に持ち歩ける小冊子など、さまざまなツールを作成しました。内容は好評でしたが、コラボレーターである海外セレブのアイデアや表現力の影響なのかブランド自体がどんどん成長し(シェアが、という意味ではなく、世界観がどんどん拡がっている)、ブランド価値もその都度見直す必要が生じる…という、ブランディングとしては本来あってはならない方向に向かいつつあるのも事実。ある時点で当社および窓口となった代理店のキャパシティを完全に超えてしまったため、現在当社はノータッチになっています。
制作物データ
●社員・販売員教育用 A4バインダー型教材 数種
●携帯用小冊子 等多数
ブランドは生きもの。育てればどんどん成長する。そして気づいた時には、生みの親が考えていたよりも遙かに大きくなっている…。そんなこともある、と実感した案件でした。
それでは、See you!